私はアトピーをよくするために、多くのアトピーの本や論文を読み、有名なアトピーサイトもほとんどすべて見ました。
その中で気になったのは、有益な情報を発信しているサイトがある一方で、嘘や間違った情報を流しているサイトやパクリ記事を掲載しているサイトが非常に多いことです。たとえパクリ記事でも正しいことを言っていればまだ良いのですが、間違った情報をパクって書いているようなサイトも見受けられました。アトピー情報が氾濫しています。
その中でも特に気になったのは、多くのサイトがアトピーの本当の原因は腸と述べていることです。果たしてそうなのでしょうか。今回はアトピーの原因は腸なのかどうかについて書こうと思います。
「アトピーの原因は腸」は正しくない
結論から言うと、アトピーの原因は腸は正しくありません。「アトピー」というワードで検索して上位でヒットするサイトのいくつかが、「アトピーの本当の原因は腸」とか「アトピーは腸のキズが原因」とか書いていますがこれは正しくないです。正しいキャッチコピーは、「アトピーで二番目に重要な原因は腸」でしょう。
詳しく説明します。そもそもアトピーで一番重要な原因は皮膚なのです。腸は二番目に重要な原因です。たとえ腸内環境をどれだけ良くしても、腸の傷が完全になくなっても、皮膚状態が悪いままだとアトピーは良くならないでしょう。
アトピーで一番重要なのは皮膚である証拠
昔からアトピーの人は皮膚バリア機能が破綻しており、また皮膚で病原性細菌が繁殖していることが知られていましたが、最近の研究で皮膚バリア機能の破綻と病原性細菌の異常繁殖がアトピーの原因だということがわかってきました。皮膚バリア機能の破綻と病原性細菌の異常繁殖についてはこちらの記事でも詳しく書いてるので興味のある人はみてください。
さて最近の研究の中で、アトピーの発症・悪化のメカニズムをよく説明しているのが二重スイッチ数理モデルです。
二重スイッチ数理モデルでは、アトピーのメカニズムを、発症を起こすが元に戻りうる“可逆的なスイッチ1”と元に戻らない“非可逆的なスイッチ2”の二つのスイッチで表しています。簡単に両者についてまとめると、
- スイッチ1は炎症を発症させるスイッチで可逆的(適切な治療でスイッチをオフにもできる)
- スイッチ2は症状を悪化させるスイッチで非可逆的(一度オンになるとスイッチはオフにならない)
- スイッチ1が頻繁にオンになることでスイッチ2もオンになってしまう
となっています。下のイメージ図がわかりやすいです。
http://www.riken.jp/pr/press/2016/20161215_1より引用
上からもわかるように、スイッチ1こそがアトピーを引き起こす根本的な原因です。
さて二重スイッチ数理モデルでは、このスイッチ1の起動条件に関わるのが、皮膚バリア機能と皮膚の病原性細菌だと考えており、皮膚内に侵入する細菌の量がある一定量を超えることで、スイッチ1が押されるとしています。
このように、アトピーの原因は皮膚にあるのです。
それでも腸は重要
じゃあ腸は重要じゃないのか?というとそんなことはありません。腸もめちゃくちゃ重要です。主に二つの理由から重要だと考えられます。
腸が重要な理由①
一つ目の理由は、腸がしっかりしているとスイッチ1がオンになりにくいからです。上述した通り、スイッチ1は皮膚内に侵入する細菌の量がある一定量を超えることでオンになるのですが、このある一定量は人によって異なるのです。そしてそのある一定量(閾値)に腸が影響していると思われます。腸がしっかりしていると閾値が高くなり、ちょっとやそっとの細菌量ではスイッチ1がオンにならないのです。だからアトピーは発症しないし、スイッチ2がオンになることもないのです。
腸が重要な理由②
二つ目の理由は、腸がしっかりしているとスイッチ2のオンを緩和するからです。スイッチ2は一度オンになると完全にオフにはできないのですが、緩和する事はできると私は考えています。スイッチ2のオンが緩和される事でアトピーが改善するのです。
一般にスイッチ2がオンになるとIgEが異常に産生されて、どんどんアレルギー反応が強まっていくとされています。一方で腸がしっかりしているとこのIgEの上昇が抑えられる事が多くの研究で明らかになっています。例えば乳酸菌を与えるとIgEが減少したとかいう実験などが有名です。
神奈川県の横浜市大で池澤善郎先生らによって行われた試験では、中等症以上の難治例が多い成人のアトピー性皮膚炎に対しても、有効性を確認することができました。
試験では18歳から54歳のアトピー性皮膚炎患者49名のうち、24名に「L-92乳酸菌」を含んだタブレットを、25名にプラセボ(「L-92乳酸菌」を含まないタブレット)を、通常の投薬治療は継続したまま8週間摂取してもらい、その経過を比較しました。その結果、図2のように、「L-92乳酸菌」を摂取したグループでは皮膚炎スコア(SCORAD)が有意に低下したことが確認されました。また、図3ではアレルギー性の炎症に伴って増加する血液中の好酸球数がプラセボ群に比べて、有意に低下したことが示されました。さらに図4では「L-92乳酸菌」を摂取したグループは、Treg誘導因子の一つであるTGF-βが有意に増加したことがわかりました。
SCORADとは、Scoring atopic dermatitisの略語で、アトピー性皮膚炎の重症度(皮膚症状とかゆみ)を指数化したもの。英文の文献では、現在、最も広く採用されています。
http://calpis-kenko.jp/l92/allergy_guide08/?cid=adlab09より引用
このように腸がしっかりしていることでアトピーの悪化を緩和できるのです。
腸だけで完治するひと
ネットの情報を見ると、腸の対策だけでアトピーが完治・寛解する人もいます。そのようなひとは、皮膚のバリア機能の破綻がそこまで深刻でなく、病原性細菌の異常増殖もほとんど起きていないと考えられます。
その上で腸が改善されることで、スイッチ1がオフになり、スイッチ2のオンも弱くなります。結果アトピーが発症しづらくなり、アトピーが治ってしまうものと考えられます。
よく、半日断食でアトピーが治った、ビオフェルミンでアトピーが治ったとかいうひとはこのパターンだと考えられます。
まとめ
今回の記事では、アトピーの本当の原因が腸なのかどうかについて検証してみました。
- 「アトピーの本当の原因は腸」は正しくない。
- 「アトピーの本当の原因は皮膚」が正しい。
- とはいえ腸も重要。
- 皮膚が第一、腸が第二。
- 腸だけで治ることもありうる。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
このブログを「いいな」と感じていただけましたら、下のランキングバナーをポチッと押していただけますと嬉しいです。

