アトピーのひとは様々な合併症を発症する可能性があります。なかには非常に危険なものもあるので、常に注意して、合併症が起きたときは迅速に対応する必要があります。
さて前回の記事(本当は怖いアトピーの合併症 ver1)では、アトピーの主な合併症のうち、眼科疾患、皮膚疾患について紹介しました。
今回の記事では、アトピーの合併症として起きる感染症について紹介したいと思います。皮膚感染症にかかると一気にアトピーが悪化することもあります。
前回同様、私の独断と偏見で各合併症の危険度を1〜5段階の星マークで表してみます。
黄色ブドウ球菌が引き起こす感染症
伝染性膿痂疹(とびひ)(危険度:★★★★☆)
http://www.tanpopokodomo-clinic.com/cgi-bin/case/siteup.cgi?category=1&page=1より引用
特徴
伝染性膿痂疹(とびひ)はアトピー性皮膚炎との合併症の中でも、最も感染者が多いと思われる疾患です。どちらかというと幼児の方が多く感染するようですが、最近は思春期以降の人の感染も増えてきています。
皮膚で繁殖している黄色ブドウ球菌が体内に侵入し、水ぶくれやかさぶたを作ります。菌の付着した手で身体をさわることで、あっという間に全身に水ぶくれやかさぶたが広がります。多くの症例において黄色ブドウ球菌が原因だが連鎖球菌が原因となることもあります。
対策
- 予防法として、常日頃から皮膚を清潔に保ち、黄色ブドウ球菌が繁殖しないようにする。くわしくは、黄色ブドウ球菌対策でアトピーを改善を参照してください。
- 治療は、抗生物質の内服・外用により、原因となる細菌を取り除く。
ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(危険度:★★★★☆)
https://www.maruho.co.jp/kanja/tobihi/popup/08.htmlより引用
特徴
ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群は、黄色ブドウ球菌が大量繁殖することで引き起こされます。
乳幼児に発症することが多く、発熱、水疱、全身性の発赤が起こります。皮膚を摩擦するだけで容易に水疱ができることが特徴です。
症状の進行に伴い、全身の皮膚がシート状に剥がれます。また喉の痛みやリンパ節の腫れを伴うこともあります。
対策
- 予防法として、常日頃から皮膚を清潔に保ち、黄色ブドウ球菌が繁殖しないようにする。くわしくは、黄色ブドウ球菌対策でアトピーを改善を参照。
- ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群が疑われ場合はすぐに病院に行きましょう。抗生物質の投与および、点滴による水分補給が行われる。
毛嚢炎(危険度:★☆☆☆☆)
https://www.bihakuskincarenavi.com/article/image_monoen_nikibi.htmlより引用
特徴
毛嚢炎も黄色ブドウ球菌が原因で発症し、年齢に関わらずアトピーの人が合併しやすい疾患です。症状としては、毛穴に黄色ブドウ球菌が繁殖することで、赤みのあるニキビのような丘疹ができます。痒みや痛みはほとんどありません。1つしかできないひとから、多量にできるひとまでいます。マラセチアが原因でできる場合もあります。
対策
- 予防法として、常日頃から皮膚を清潔に保ち、黄色ブドウ球菌が繁殖しないようにする。くわしくは、黄色ブドウ球菌対策でアトピーを改善を参照。
- 発症したら、石鹸でよく洗い、消毒する。
- 病変部が大きく深部にある場合は、皮膚切開を行い抗生物質を使用する。
ウイルスが引き起こす感染症
カポジ水痘様発疹症(危険度:★★★★☆)
http://ww6.et.tiki.ne.jp/~ksaitof/kaposi.htmlより引用
特徴
カポジ水痘様発疹症は、年齢に関わらず、アトピーの人が発症しやすい疾患です。多くの場合、乳幼児期にすでに単純ヘルペスウイルスに感染しており、ストレスや過労、ステロイド薬などの影響で免疫が弱っているときに発症します。
症状はアトピーで傷ついた皮膚に小さな水ぶくれが作られます。高熱を発し、特に乳幼児では全身状態が悪化します。 顔に症状が出ることも多く、眼球結膜、角膜への感染が疑われる場合には、眼科の検査が必要となります。
痒みよりも疼痛の症状が強いですが、発疹がおさまりかさぶたが出来てくると、痒みが生じる場合もあります。
対策
- 免疫が落ちないように過労やストレスを避ける。
- ヘルペスウイルスの治療薬アシクロビルまたはバラシクロビルを服用する。
伝染性軟属腫(水イボ)、尋常性疣贅(イボ)(危険度:★☆☆☆☆)
http://atopy.com/水いぼ(伝染性軟属腫)より引用
特徴
伝染性軟属腫は主に幼小児期のアトピー患者に出現するウイルス感染症です。プールで感染します。症状は、光沢のある直径0.5mmから3~5mm程度の少し赤みを伴った丘疹ができます。丘疹を潰すことで中からウイルスを押し出すことができ、治癒します。放置していても自然治癒することもあります。
尋常性疣贅もアトピー患者にに合併しやすいウイルス感染症です。イボウイルスがアトピーで傷ついた皮膚に接触することで伝染します。症状は、直径1mmから5mmまでの丘疹が、出現することがあり、主に四肢にできやすいです。自然治癒することもありますが、皮膚科では液体窒素で焼くことで治療します。
真菌が引き起こす感染症
カンジダ症(危険度:★★★☆☆)
http://suzukiak.blog24.fc2.com/blog-entry-5.htmlより引用
特徴
カンジダ症は免疫力が低下することで、発症・再発します。カンジダ症は皮膚や爪などに感染することもあれば、口や膣内など粘膜部分に感染することもあります。女性の場合は膣カンジダを発症することが多いです。乳幼児は皮膚カンジダ症を起こすことがあり、湿潤性の紅斑が局面状に発生します。カンジダ真菌は病原性の弱い常在菌ですが、免疫が落ちることで容易に再発します。
対策
- カンジダ真菌に抗菌力のある抗真菌薬の外用する。
- 症状がひどい場合は抗菌作用のある内服薬を使う。
白癬(危険度:★★★☆☆)
http://buntan-atopii.seesaa.net/article/404929240.htmlより引用
特徴
アトピーのひとは、白癬菌に感染しやすいです。白癬菌はいわゆる水虫の菌です。白癬菌に感染すると、病巣を中心として周囲にも湿疹ができます。感染力が強く、プールなどを媒介として感染します。合併症を起こすとアトピーの湿疹と白癬の湿疹が混ざってしまい、どこが白癬でどこがアトピーなのか見分けが付かなくなります。ステロイドを用いることで悪化します。
対策
- 白癬菌に抗菌力のある抗真菌薬の外用する。
- 症状がひどい場合は抗菌作用のある内服薬を使う。
まとめ
以上です。思ったより多くの感染症があってびっくりしませんでしたか?
星マークが一つの危険性の低いものは放っておいても自然治癒することもありますが、星マークの多い感染症は放っておくとさらに重症化します。感染症が疑われる時はすぐに病院に行くようにしましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
このブログを「いいな」と感じていただけましたら、下のランキングバナーをポチッと押していただけますと嬉しいです。

