アトピーの人の中には保湿派と、脱保湿派の人がいます。
どっちも一長一短があります。今回は保湿と脱保湿についてまとめてみます。
目次
保湿はなぜ必要?
アトピー患者のひとは乾燥肌です。肌本来の保湿成分である天然保湿因子(NMF)、セラミド(細胞間脂質)、皮脂がいずれも不足していることが分かってます。
これは遺伝的な欠陥の場合もあるけど、アトピーの炎症で肌の機能が落ちているせいというのもあります。だからこそ、アトピーが良くなり炎症がなくなれば、自然と肌本来の保湿成分がでてくるようになり乾燥肌も改善する。
http://www.moltolice.co.jp/page053.htmlより引用
さて、乾燥肌だと、
乾燥肌→痒みが誘発→搔き壊し→アトピー悪化→肌の保湿成分がでない→乾燥肌が悪化
という負のスパイラルに陥ります。
保湿の目的は、肌に足りていない保湿成分を補うことで、肌を乾燥から守り、この負のスパイラルを止めることです。
つまり、
乾燥肌を保湿→痒みがない→搔き壊さない→アトピーが良くなる→肌の保湿成分がでる→乾燥肌が治る、
という良いスパイラルを起こすことが本来の目的になります。
アトピーのひとに保湿が大事なのはこういった理由からです。
保湿の欠点
さていいことづくめに見える保湿ですが、いくつか欠点があります。それは①逆に痒みが増すことがある、②肌の新陳代謝が阻害される、③保湿依存状態になり肌の機能が損なわれる、です。
①逆に痒みが増すことがある
これは肌に保湿剤が合わなかったり、場合によってはアレルギーを起こすことがあるからです。
保湿剤には防腐剤などの余分な成分が入っていることがあり、それに反応しているということもあります。
しかも保湿剤を塗った上で掻き毟ると皮膚が柔らかくなっているぶん傷が深くなるというおまけつきです。
保湿剤ぬって痒くなるくらいなら塗らないほうがいいです。
②肌の新陳代謝が阻害される
保湿剤により肌に蓋がされることで、肌の新陳代謝(ターンオーバー)が阻害されます。
本来皮膚は基底層から表皮細胞が日々誕生し、代謝活動をしながら押し上げられていき、やがて角質として完成することで皮膚バリアが機能しています。
このプロセスが阻害されることで、肌の再生が行われづらくなり、肌本来の保湿能力の再生も遅れます。
http://www.yirenyiyuan.com/entry13.htmlより引用
③保湿依存状態になり肌の機能が損なわれる
人間の体は外部から何かが供給されているという状態が続くと自分の体でその成分を作る機能が衰えてしまいます。
鋭い方は気づいたかもしれませんが、まさにステロイドなしでは肌が正常に機能しないステロイド依存と同じ状態です。
保湿を長い間行なっていると、保湿なしでは肌が正常に機能しない保湿依存という状態に陥るわけです。
脱保湿(脱軟)って何?
脱保湿(脱軟)は保湿による欠点があるくらいなら、保湿なんてやめて肌本来の力を取り戻そうというものです。脱ステで有名な佐藤健二先生とか藤澤重樹先生が脱保湿を推奨しています。
脱保湿派のひとは、入浴後に保湿をしなくてはならないという状態がすでに異常だと考えているのです。
標準治療が保湿を推奨しており、ほとんどの皮膚科医がアトピーに保湿は必要不可欠だと考えているので、脱保湿はなかなか受け入れられず、一見ただ治療の放棄に見えるかもしれませんが、効果のある人には大きな効果があります。
特に脱ステロイドを行っている人は、同時に脱保湿をすることで治りが早くなることが経験的に知られています。以下は脱ステで有名な佐藤健二先生の言葉です。
脱ステロイド後、症状が軽くなった時期には保湿剤は皮膚に悪い影響を及ぼ します(このことはほとんどの皮膚科医が気付いていませんのでここで特に強調したいことです)。
この時期に残っている紅斑(赤み)など皮膚の症状をよくす るためには、保湿ではなく乾燥が必要です。
この時期には、ワセリン・アズノール軟膏・種々のクリーム・化粧水・馬油・オリーブオイルなどほとんどすべての油(石鹸で洗わない場合は自分の皮膚の油でも)は、赤みなどを持続させるように働きます。
女性の場合、化粧ができるかどうか大変気になるが、化粧も一種の保湿なので、脱ステロイド終了後少なくとも1年間は我慢していただいています。
このような治療を始めたのはまだ日が浅く、どうして脱軟がよいのか、これが正しいかどうかは今後明らかになると思います。
重症成人型アトピー性皮膚炎患者のステロイド外用剤離脱より引用
またステロイドはすでに使っていなく、保湿のみで日常を過ごしているひとにも脱保湿が奏功することがあります。以下は藤澤重樹先生の考えです。
入浴後、直ちに外用しなければ耐えられない』ということ自体が異常なのです。
保湿(剤)依存症という異常。保湿剤依存の状態の方にしてみれば、依存から脱する脱保湿は理解が困難で、受け入れ難いものです。
しかし、一気に脱軟をしてみると、最初の2週間ぐらいはバリバリ、ガビガビで大変ですが、その後炎症がなくなり、発赤も消えていきます。
体を動かすと切れるような感じさえして痛いこともありますが、炎症が取れてきて、かゆみは減ります。
1ヶ月もすると、少しずつ元通りの皮膚の自然の保湿力がよみがえり始め、ガビガビが改善してきます。
その後は時を経るにつれ、さらなる自然治癒がすすみます。
http://fujisawahifuka.com/datsunan.htmlより引用
脱保湿の欠点
脱保湿の欠点は、皮膚の乾燥が抑えられず、症状が劇的に悪化することがあることです。
乾燥した皮膚はバリア機能が損なわれているので、アレルゲンが入り放題になって、肌本来の力を取り戻すどころか、アトピーの大悪化につながる可能性が高いのです。
http://www.myclinic.ne.jp/imobile/contents/medicalinfo/gsk/top_topic/topic_24/mdcl_info.htmlより引用
結局、保湿と脱保湿どっちがいいの?
ここまで読んで、結局保湿と脱保湿どちらが良いかということなのですが、結論としては、私はアトピー患者は保湿をすべきだと考えています。
上述の保湿剤の欠点は、自分にあった保湿剤を選ぶことでほとんど回避できるからです。
そして保湿剤を用いることで、乾燥肌を保湿→痒みがない→搔き壊さない→アトピーが良くなる→肌の保湿成分がでる→乾燥肌が治る、という良いスパイラルを起こすことができれば、自然と保湿の量も頻度も減っていき、脱保湿できるからです。
ただ上にも書いたように、合わない保湿剤を使うくらいなら保湿しないほうがいい。自分にあった保湿剤を見つけるようにしましょう。
さて脱保湿についても、有効な場合があります。それは脱ステをするときです。脱ステ時に脱保湿をすることで、リバウンド期間は短くなります。
脱ステの方法については脱ステの正しい方法も参考にしてください。実際私も脱ステのときは脱保湿を同時に行いました。
以上をまとめると、
- 脱ステに踏み切るときには同時に脱保湿すると経過が良い。
- 皮膚が乾燥するときは保湿をする。
- ただし自分の肌に合う保湿剤を慎重に見つける必要がある。
- アトピーの調子がよくなり乾燥しなくなれば自然と脱保湿に移行していく。
というのがベストではないかと考えています。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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