今回はステロイドやプロトピックの塗り方の話です。
プロアクティブ療法はテレビでも取り上げられているので、知っているひともいると思いますが、正しく説明できるひとは意外と少ないのではないでしょうか。
プロアクティブ療法がうまくいくと、アトピーの症状がおさまり、再発もほぼなくなります。結果、症状の良い状態を維持でき、高いQOLを達成できるのです。まさにステロイドの理想的な使い方です。
それでは、プロアクティブ療法について説明していきたいと思います。
目次
プロアクティブ療法って何?
プロアクティブ療法とリアクティブ療法
http://www.saitoh-clinic.com/201009/page/07%20oyakudachi/koumoku/zensoku.htmlより引用
アトピーのひとがステロイドやプロトピックを使うときは、症状が出たときだけ薬を使うリアクティブ療法と、症状の出る前から予防的に薬を使うプロアクティブ療法の2種類があります(上図参照)。
アトピー患者の多くは、リアクティブ療法を行っていると思います。症状が出たらステロイドを使う、炎症が治まったらすぐにステロイドをやめる、また症状が出たらステロイドを使うみないな使い方です。
ただ成人のアトピーの場合、このリアクティブ治療ではうまく症状をコントロールできないことが多いです。そこで、皮膚症状が落ち着いているときも予防的にステロイドを使いアトピー症状の再発を防ごうというのがプロアクティブ療法です。プロアクティブ療法がうまくいくと炎症がない状態を維持できるので、リアクティブ療法に比べQOLが高くなると言われています。
それではプロアクティブ療法のやり方について説明します。
アトピーが重症のとき
重症の時は十分量のステロイド・プロトピックを塗る必要があります。たとえば、成人で全身性のアトピーの場合ステロイド外用薬1回20gの使用量で治療を開始することが推奨されています。薬を使う量はフィンガーチップユニットを使って適量を用いましょう。フィンガーチップユニットや適切な外用量については外用薬を正しく使おうを参照してください。
かゆみが軽快し皮膚症状が落ち着いてきたら、毎日の塗布をやめ、隔日に移行します。この隔日での外用でも再発がない場合には、徐々に週二回外用、一回外用へと減らしていきます。
ただし、ステロイドを外用しない日でも毎日保湿はするようにします。
症状が軽快したら
プロアクティブ療法では、症状が軽快し炎症がなくなった部位にもステロイドを塗るのが原則です。一見きれいに見える皮膚でもアトピーの症状があった部分は皮膚の内部に炎症が残っており、再発する可能性があるのでステロイドを塗るのです。
使用量はもともとの使用量の1/3量から1/2量を用います。保湿剤と混ぜることで、少ない量でも全身にのばすことができるのでおすすめです。
この外用の方法で、隔日外用、週2回外用、週1回外用と減らしていきます。途中で症状の再発があった場合は、ステロイドの外用量と頻度を最初に戻します。
プロアクティブ療法では基本的に週1〜2回の外用を推奨していますが、プロアクティブ療法がうまくいき、4週間に1回の外用でも症状がコントロールできるようになる人もいます。
ステロイド外用薬をたくさん塗っているように感じるかもしれませんが、週1回外用であれば全身で1週間に10g~7gしか塗っていないことになり、しかもコントロールは良好ですので、非常に効率のいいことがわかると思います。個人差がありますが、1回5g以下で全身に薄く塗っても良好なコントロールを維持している人もいます。このようにステロイド外用間隔を徐々に開けていき、2週間に1回あるいは4週間に1回だけ、ステロイド外用薬を全身に5g塗るだけで良好にコントロールされている方もいます。
http://www.kyudai-derm.org/atopy/docter/16.htmlより引用
症状の再発について
プロアクティブ療法を行っていても症状の再発はありえます。その場合は、すぐに薬の量と頻度を戻し十分に外用しましょう。ただし、再発しても大悪化は少なく比較的にすぐにコントロールできます。そしたらまた、隔日外用、週2回外用、週1回外用と減らしていきます。
下の図を参照してください。
http://www.kyudai-derm.org/atopy/docter/16.htmlより引用
プロアクティブ療法はいつまで続ける必要があるか
プロアクティブ療法の第一人者であるドイツの Wollenberg 氏によると
中等症の患者さんは半年間継続してから中断を試みるべきでしょう。
重症の患者さんは約2年間プロアクティブ療法を行ってくださいとアドバイスしています。中略
アトピー性皮膚炎は慢性の皮膚疾患で、永久的な治療を必要とする。
http://atopysan.hatenablog.com/より引用
とのことです。基本的には長期間にわたって続ける必要があります。(中等症か重症かはTARCを参考に判断すると良いでしょう。TARCについては、アトピーさんの血液検査を参照してください。)
ステロイドを使用しないでコントロールできる可能性も、一生プロアクティブ療法を続ける可能性も示唆されています。
プロアクティブ療法の副作用は
プロアクティ療法はうまくいけば外用量が減っていき週一回や二回の外用になるので副作用は少ないと考えられています。
特に全身に皮疹があった患者さんは、全身の病変として、ステロイドを全身に塗っていくことが大切です。そうするとステロイドの使用量が大変なことになると思われますが、1週間、全身に塗ったら、その後は1日おきにして、1ヵ月ほど再発がなければ1週間に2回全身に塗るようにする。こうすれば、一生ステロイドを塗り続けたとしても副作用が起こることはあり得ません。
http://www.a-to-pi.com/dialogue/07_01.htmlより引用
上の引用では副作用は起きないと断言していますが、これに関してのエビデンスはありませんでした。とはいえ、週に1〜2回の外用でアトピーの炎症を完全に抑えられているのであれば、大きな副作用はないと考えられます。
私の見解
プロアクティブ療法はあり
私は脱ステ推奨派ですが、プロアクティブ療法はありだと考えています。というのもプロアクティブ療法がうまくいけば、減ステを行うことができ、自然とステロイドを抜くことができる可能性があるからです。
そしてその可能性は原因療法とプロアクティブ療法を組み合わせることで飛躍的に高まるのではないかと考えています。
実際に私の知り合いに、プロアクティブ療法で減ステからの脱ステに成功した例もあります。
現在リアクティブ療法でだらだらとステロイドを使っている人は、プロアクティブ療法を試してみるの一つの手です。
ただし、プロアクティブ療法には以下のような懸念点もあります。
懸念点①ステロイドを減らすことができない可能性
すでにステロイドに重度に依存している重症患者はプロアクティブ療法が不可能な可能性があります。毎日ステロイドを使わないとアトピー症状を抑えられないため、ステロイドの使用量と頻度を減らすことができないからです。
原因療法を組み合わせてもプロアクティブ療法が不可能な場合は、毎日ステロイドを使い続けるか、脱ステしか道はないと思います(ただし、ステロイドの効果は減弱していくので、いずれは脱ステしかない可能性が高いです)。
懸念点②ステロイドの使用量が多くなる可能性
リアクティブ療法に比べ、炎症が抑えられておりQOLが高いのですが、ステロイドの外用量は多くなります。そのため、短期的にはどうしてもステロイドのさまざまな副作用が起こる可能性が高まります。
まとめ
本記事では、プロアクティブ療法についてまとめました。
- プロアクティブ療法はうまくいけば高いQOLを達成できる。
- プロアクティブ療法により減ステや最終的に脱ステをできる可能性がある。
- 重度のステロイド依存者などはプロアクティブ療法はうまく行かない可能性がある。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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