以前の記事プロトピックはアトピーにいいの?悪いの?でプロトピックについてまとめました。確かにプロトピックは炎症を抑える作用が強く、ステロイドのような皮膚萎縮などの副作用もなく、顔の赤みを取る上では非常に有効です。
しかし私はプロトピックをステロイドのかわり常用することに関して反対です。その理由についてまとめたいと思います。
(ただし、短期決戦で皮膚の炎症や赤みを取るために使うという使い方は非常に有効でありだと考えています。)
目次
プロトピックは皮膚免疫を落とす
プロトピックは皮膚の免疫を抑制することで痒みや炎症を抑える効果を発揮する薬です。
この皮膚の免疫を抑えることによって、皮膚の常在菌のバランスを崩す可能性があり、有害な病原性細菌が増殖してしまうことがあります。プロトピックはステロイド以上に感染症にかかるリスクが高いようです。実際にプロトピックを使用している人の中には、伝染性膿痂疹、単純疱疹、カポジ水痘様発疹症、白癬などの感染を起こす人がいます。毛嚢炎の発現率が約12%、カポジ水痘様発疹症の発現率が約4%との報告もあります。
私は皮膚での病原性細菌の繁殖がアトピーの重大な原因であると考えています(詳しくはアトピーの本当の原因は皮膚免疫と腸内免疫にあり参照)。病原性細菌の数が多くなると、一気にアトピーは悪化するのです。
さて、プロトピックは皮膚の炎症を抑えると同時に、皮膚の常在菌のバランスを崩しアトピーを悪化せるという作用もあり、まさにアクセルとブレーキを同時に踏み込むようなものです。だから一時的に炎症が治まっても、皮膚の常在菌のバランスが崩れているために、すぐに痒みと炎症は再発します。そして場合よっては重大な皮膚感染症を引き起こし、皮膚炎が重篤化します。
あえて、感染症を併発するリスクをおかしながら、プロトピックを使うよりも、ステロイドや非ステロイド軟膏で炎症を抑えつつ、消毒を励行し、病原性細菌の繁殖を抑えた方が長期的にみると治りは早いと考えています。
プロトピックはガンを起こす可能性がある
製薬会社は発がん可能性を否定
プロトピックがガンを起こすことに関して、使う量を間違えなければ問題ないと言ってる医者やサイトがたくさんありますが、実際のことはまだ完全にはわかっていません。
わかっていないにも関わらず、下の引用部分のように、製薬会社発がんとプロトピック因果関係を否定しています。
弊社としましては、皮膚がんの3例についてはいずれもプロトピック軟膏との因果関係は否定的であると考えております。また、リンパ腫3例のうちの1例(54歳男性)については本剤との因果関係は否定的であると考えており、残り2例については情報不足のため因果関係を判断することが困難であると判断しました。
http://www.yakugai.gr.jp/topics/file/f040116ujisawakaitou.pdfより引用
プロトピックは比較的新しい薬のため、長期間使用している人のデータ数がまだまだ少ないという理由と、ガンはさまざまな因子が複雑に絡み合って発症するので仮にガンが発症してもそれをプロトピックのせいだとは断定できないのを理由に、発がんとの因果関係を否定しています。
一方で長期使用の発がんリスクについてはぼかす
そのくせ、プロトピックを使用する際は、傷口に塗らない、一回の外用は5gまでで、12時間間隔を空ける、日光に当たらないなどの制約を課すとともに、下の引用のように、長期使用の発がんリスクは否定できないという様にぼかしています。
長期使用における有用性や安全性は、必ずしも十分に確かめられているわけではありません。とくに、リンパ腫や皮膚がんの発現リスクを完全に否定することができません。今のところ、それらの発生増加は認められず、特段のリスクはないものと考えられていますが、10年以上の長期使用時、あるいはその後の将来にわたる安全性や予後改善については今後の課題です。塗布部位をできるだけ日光にあてないなど、医師の指示どおりに慎重に使用する必要があります。
http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se26/se2699709.htmlより引用
そもそもなんで発がんリスクが疑われているのか?
じゃあ、そもそもなんでプロトピックは発がん性が疑われているかというとマウス実験の段階で発がん性を示す結果が出ているからです。
マウス塗布がん原性試験は、軟膏基剤および 0.03%、0.1%プロトピック軟膏を体表の 40%相当部位に 2 年間ほぼマウスの一生涯毎日塗布し、発生する腫瘍を無処置群(Sham 群)と比較することでがん原性の有無を調べたものです。その結果、プロトピック軟膏塗 布群で皮膚腫瘍の増加は認められませんでしたが、0.1%軟膏群にはリンパ腫発現頻度の増 加が認められました。血中タクロリムス濃度は各群で投与期間中ほぼ一定の推移を示しま したが、リンパ腫発現頻度が増加した 0.1%軟膏群での Cmax は 27~50g/ml(平均 35ng/ml)、 AUC は 275~646ng・hr/ml(平均 484ng・hr/ml)でした。すなわち、本試験の結果は、 マウスの場合、このような高い血中タクロリムス濃度がほぼ一生涯続いた場合にリンパ腫 発現頻度が増加することを示唆しております。
http://www.yakugai.gr.jp/topics/file/f040116ujisawakaitou.pdfより引用
つまりマウスでプロトピックを使うと薬の成分の血中濃度が高い状態だと発がん性があった、だから人間も薬の成分の血中濃度が高い状態だと発がんするかもしれないから血中濃度が低めになるように薬の量は抑えて使いましょう、というのがプロトピックの現状なのです。
紫外線についてもプロトピックを使ったマウスでが紫外線を浴びると発がんしたから、人間も紫外線は避けようということになっているのです。
発がん可能性は否定できない
これまでの流れをすごい簡単にまとめると、「プロトピックに発がん性は基本的にないよ。ただマウス実験でプロトピックの血中濃度が高いと発がんしたから、人間でも量を少なく使えば発がんはしないだろう、でも長期使用の場合はしらないよ」という非常に無責任なのがプロトピックなのです。
さてアメリカではすでにプロトピックの危険性に対して警告しています。
『アトピー治療薬 発がんの可能性 米食品医薬品局』
『米食品医薬品局(FDA)は十日、藤沢薬品工業が開発したアトピー性皮膚炎の治療薬「プロトピック」(一般名・タクロリムス)が発がんに関連している可能性があるとして、他の治療が効かない場合に限って短期間で使うよう、医療関係者に呼びかけた。
動物実験でがんが見つかり、使用量が多いほど危険性が高いことが確認されたためで、患者の中には少数のがんの報告があるという。プロトピックは、免疫抑制剤として開発された成分を塗り薬にした新薬。』
読売新聞2005年3月12日より引用
もちろん、マウスに比べ人間はもともとの発がん可能性が低いし、プロトピックの血中濃度の計算なども十分に安全性を考慮して行われているとは思います。
しかし、このような事実を知ってあえてプロトピックを使おうとは思わない、というのが現在の私のスタンスです。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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